西川公子という人の「母娘で綴った介護の詩」という本を読んだ。これは絵手紙作家の西川公子さんが夫の発病から介護、死までを見取った記録だが、「脊索腫」に関してこれまで書かれた唯一の書物ではないかと思う。
サラリーマンだった夫が50前後で発病したが、その病名は「脊索腫」。最初は横浜戸塚区の地元病院で肛門の近くの排膿手術を受け、2年後保土ヶ谷区の少し大きな総合病院で、脊索腫と診断され、腫瘍部分の切除で尾てい骨、仙骨を取り、人工肛門となった。
その3年後、再発し東京T大学病院(私もカルテを置いてある東京医科歯科大学病院か?)で腫瘍部分、坐骨神経を切断。翌年再発し、腫瘍切除。さらに翌年昭和63年には左足を股関節から切除、その後自宅療養を続けたが、痛みが激しくなり、平成元年には右脚を切除した。
10年間に9回も手術を受け、平成3年に60歳で亡くなった。この手記は、奥様の介護を主材においており、ご主人の顔はあまり見えてこないし声も聞こえてこない。しかしただ切るだけの医学に翻弄されて両足を失い、それでも不平も言わず黙々と医者に全てを任せつつ、最後になくなったご主人の本当の無念さを思い、何回か涙を禁じえなかった。