遊化の森

「仙道」修練のもうひとつの局面



◆ 「奇経八脈」修練で再現する「元神」の世界。
◆ 「胎児」状態へのバイオフィードバック。
◆ 「エントロピー拡大法則」に逆行。

さてこれまで「仙道」修練は,眠っていた「奇経八脈」を目覚めさせて、そこに「気」と
「精」を周流させることで成り立っている修行法であるということを再三にわたり述べ
てきました。繰り返しになりますが、その第一段階が「小周天」。「督脈」と「任脈」を
目覚めさせ、そこに「気」と「精」を周流させ、このふたつを合体して煉り合わせ、「神
」の作用を繰り返し働かせることで,別の物である「キ」(気の変成したもの)を作り
上げます。武息、文息、導引などは,この作業を有効ならしまるために行う修練にほかな
りません。

第二段階では、こうして作り上げた「キ」を、さらに練り合わせ,絶えざる「神」の作用
によって「大薬」を作り、同時に「奇経八脈」を開発して、ここに「キ」を周流させる
「大周天」の行法を修練し,心身を鍛え上げていきます。仙道というのは簡単にいえば
これだけのことです。ただ、それは「何のために」やるのでしょうか?ご承知のように
仙道では「精」「気」「神」という三つを人間存在の根源だと考えています。

「精」は人間としてのエネルギー、精液や唾液として具体化されている生命エネルギー
です。「気」は人間が地球環境の中から取り入れ(前述したように),生命運営の活力と
して活用しているエネルギーです。「神」というのは意識エネルギー、脳や目や耳がもつ
意識の光のエネルギーです。仙道はこれら三つのエネルギーを煉成して「奇経八脈」に
周流させていく行法ですが、なぜ「奇経八脈」であるかという点について考えてみまし
ょう。

これまでしばしば述べてきたように「奇経八脈」は,人間誕生以前の「胎児」の時代には
開いていて母体を通じて、「精」「気」「神」のエネルギーを胎児の生命体の中に採り入れ
ていたものです。しかし,人間が誕生し,嬰児の時代を過ぎると,一方では「正経十二脈
」という経絡ネットワークが嬰児の体内に完成するとともに「奇経八脈」は閉じてしま
います。

この時一方では「精」の面では、エネルギー採取方法が大きく変化します。嬰児の時代
を過ぎると、後天的にエネルギーを食事という形で外部から採り入れる方式になり、口
から食物という形でエネルギーを採取する後天的エネルギーの量が増えるにしたがって、
「胎児」の時代にあった「気」(元気)エネルギーを身体全体で胎息により採り入れるシ
ステムが完全に退化してしまいます。「気」についても同様で、「嬰児」の段階を過ぎ、
口・鼻での「呼吸」が盛んになるとともに、もともと胎児の時代にはあった全身呼吸「胎
息」は姿を消してしまいます。また嬰児の時代を過ぎ,後天的な「神」(意識)が発達し
てくると、もともとあった「元神」(先天的な神)は後方に姿を隠してしまいます。

人間が「胎児」から,この世に誕生して,幼児―成人と身体も精神も肥大化していき、口・
鼻で呼吸し、食事を口から取るシステムは一般には「成長」といわれます。成長の時期
を経て、あとは成熟―衰退―死というサイクルが人間の一生です。「仙道」はこの「衰退
」の部分から始まったと思われます。古代中国の「不老不死」願望をシステム化しょう
としたのが「仙道」の始まりですが,外丹法、養生術等の試行錯誤の後、宋・明の時代に今
日みる「内丹法」のカリキュラムを完成させたのです。

さて,元に戻って「仙道」では人間が成長して「後天的」に身につけた「精」「気」「神」
の中に人間衰退への要素があると見ぬいたのです。後天的に身につけた「神」(意識)の
動きは人の心を不安定にする。争い、競争、悲しみ、喜びなど人間の基本的感情は全て
後天的に身についた「神」であり、「生・老・病・死」の苦しみはこの不安定な心の動き
から始まると考えたのです。口から食事を採取するシステムは時には過食や暴飲暴食を
生み、身体に悪いものまで摂取して病気を生み出し、口から呼吸で取り入れた「気」も
同様に危険な要素を内蔵していると考えたのでした。

つまり「胎息」の時代には「無為にして自然」のままに完成されていた「精」(元精)、「気
」(元気)、「神」(元神)のシステムを復活することで「不老不死」は防げると考えたの
でした。そこで人間が成長した後は閉じていた「奇経八脈」を復活させ、そこに後天的
な「精」「気」「神」を煉成し、本来胎児の時代にはあった「元精」「元気」「元神」の状
態を作り出すという考え出したのです。その手段として「奇経八脈」を舞台に,繰り返し
バイオフィードバックすることで肉体―精神の双方を「胎児」の時代に還元する方法を
生み出しました。「仙道」の修練にほかなりません。仙道修練が進めば、あまり食事をし
なくなり、口・鼻で呼吸をしなくなり、喜怒哀楽の感情が起こらなくなりますが、それ
にはこういう意味があったのです。

しかし、もしこういうことが現実に可能であるならば、永遠の物理法則である「エント
ロピー拡大の法則」はどうなるのでしょうか?熱力学の大原則である「エントロピー拡
大の法則」では時間も空間も個体も、すべて拡大の方向にしか向かいません。これが地
上のあらゆる物を縛る大原則です。人間などの生物が成長、成人し、成熟,衰退していく
過程においても,次の時代に生命を残すことによって「エントロピー」を拡大していくの
です。ところがもし、「仙道修練」で成人した人間が「胎児」の状況になるとしたら、こ
れは明らかに「エントロピー拡大の法則」に反しています。未来に向かってしか進まな
い「時間」を逆行させるようなものです。

ですから「仙道修練者」は、物理の大原則に反して「エントロピー」を逆行する「実験
」を自分の肉体と精神を使って行っているのだと言っても間違いではありません。物理
学にとっては、このことは地球がひっくり返るような事態であることは確かです。これ
が「仙道」のひとつの局面でもあるのです。
by yuugean | 2001-10-26 09:41 | 内丹法を修練する
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